皆さんこんにちは。新型コロナウイルス感染症が世界的に流行し始めてから、早くも丸2年以上が経過しました。未曾有の爆発的な感染の拡がりと死亡リスク・合併症・後遺症の恐ろしさへの対応として、世界的に「人とじかに接すること」「大人数で集まって何かをすること」を極端に制限して生活することが当たり前となってしまった2年間でした。
テレワークが主体となった方では、通勤がなくなって歩行量が減少し(1日3000歩以下など)、飲み会や外食の機会は減少したものの自宅での仕事ではついつい買い置きの食べ物に手が伸びたり、さらにチームでするスポーツや格闘技などを趣味としていた方々の運動機会も減少しました。そのため、日頃当センターで健診を受診されている方々も、診察の場で「コロナ禍で5~6kg太っちゃって」と仰る方は多くなっているように感じています。
まず全身の筋肉量が減少している恐れがあり、その一方で体重は増加するようです。そうなると、転倒しやすくなる、腰痛・膝痛など筋骨格系の疾患が発生する、適度な運動の減少と食習慣の異常から骨がもろくなる、血糖値・血圧・脂質などが異常値となりその結果、脳・心臓血管疾患を引き起こすなど様々な健康障害に繋がり得ます。
また趣味・運動習慣の場は、家族の一員としてや職場の役職から離れたコミュニティでの生活・交流を楽しむ場ともなっており、それが失われたことで身体だけではなく、精神的影響も多大なものが生じていると言えるでしょう。
Point1 生活リズムを崩さない
まず、睡眠・食事などの生活リズムは元の状態から大きく変動させない方が良いでしょう。起床時間が2時間以上遅くなると生活のリズムが乱れやすい(その日の夜がなかなか寝付けなくなるなど)ので、起床は一定時刻(出来れば出勤する場合と同様に)をキープしましょう。朝出勤しないのであれば出勤に使っていた時間に相当する時間帯に、外へ出て散歩することを習慣づけてみるのも良いと思います。
Point2 マスク着用と運動の関係
続いてマスク着用と運動の関係です。2年前以来、我々の生活ではマスク着用が欠かせなくなっています。ところが、皆さんも実感されていることと思いますが、マスクをした状態で走ったり階段を上ったりすると日頃マスクがなかった時よりもだいぶ息苦しさを感じます。マスクの吸気抵抗が大きい時には呼吸のために横隔膜に加え、胸郭を動かす肋間筋群を動かし、深く呼吸することが必要になるからです。この呼吸筋群に対する負荷が増加するとエネルギー消費量が増加し、運動継続可能時間が短くなることや、一定以上の運動強度になるとマスクなしと比べて心拍数が有意に増加することが分かっています。また、マスク着用によって目立って深部体温が上昇はしないものの、マスク内の皮膚温度が上昇することにより全身の暑熱感や不快感につながる(顔においては温熱受容体の密度が大きいからと言われています)と考えられています。
また、人が健康であるためには1週間で合計1000kcalの運動が推奨されており、これは中強度の有酸素運動を1日30分以上×週5日実施することに相当します。さらに体力向上や体重の維持・減少を目的とする場合には、週合計2000kcal以上の運動(中強度の運動を1日50~60分×週5日以上)が必要であるようです。
ある研究ではマスク着用で30分運動すると、着用していない場合と比較して15kcal程度多くエネルギーを消費していることが分かっています。そのため週合計1000kcalを目的として運動する場合、マスク着用時は1週間あたり約10分間運動時間を短縮できることになります。ただし、呼吸筋が疲労して血中乳酸濃度が上がるほどの負荷をかけてしまうと、むしろ活動筋への血流量や酸素供給量を制限してしまうので、持久的運動の妨げになると考えられています。したがってマスク着用の際は有酸素運動となる負荷が過大でないレベルで、運動継続時間はやや短めで実施すると良いと思われます。
Point3 熱中症対策
これからの季節は湿気が多く気温が高い時期になりますので、運動は熱中症対策を念頭において実施すべきです。マスクなしでも呼吸による放熱量は代謝熱の5~10%とさほど多くないため、マスク着用でそれらが失われても影響は小さいという意見もあります。一方、マスクを着用していると口周囲の湿度がそれなりに保たれるため喉が渇く実感が生じにくく、マスク着脱の煩わしさから飲水量が減少するとも言われています。屋外で運動を実施する時は、近距離で会話をせずに(1~2ⅿは距離を置く)少し離れてマスクを外して取り組むことを検討しましょう。勿論、水分や塩飴などは運動時に手元に置き、何かあれば早急に補給が出来るようにしておきましょう。
Point4 食事について
「コロナ太り」という言葉も多く聞かれるようになりました。ダイエットと言えば、運動同様に切り離せないのが食事です。食事はよく噛んで味わって食べる方が少量でも満腹感を得やすく、かつ消化器への負担も少なくなります。特にこれからの季節は、ついつい冷たいものや喉ごしのよいものを好んで多く取りがちですが、それが極端になってしまうと胃腸の調子を含めて体調を崩してしまうことにつながる恐れがあります。
喉ごしのよいもの、としてそうめんや冷や麦など麺だけで終わらせてしまう方がいますが、これではたんぱく質の不足と糖質の取り過ぎにつながります。麺をお腹いっぱい食べるのではなく、麺類は少なめで、天ぷら、納豆や豆腐などの大豆製品、豚肉の冷しゃぶなど工夫してたんぱく質を適度に同時に取ることを心がけましょう。たんぱく質が不足してしまうと、一見健康的に思われますが実は栄養不良の状態となり、感染症に弱くなるなど体調不良になることがありますので気をつけ ましょう。
Point5 冷たいもの、飲み物の選び方
冷たいものについて熱中症対策としては作業の合間に身体を冷やす意味で有用ですが、過剰になると消化管の不調につながります。また、冷たいもの=アイス、ジュース、缶コーヒーなどは糖分が多い場合もあるので(熱中症対策のスポーツドリンクであっても)、1日に数リットル消費するようなケースでは糖尿病を発症してしまうことがあります。少なくとも、糖尿病治療中の方や健康診断で尿糖が出たことがある方は、熱中症対策の飲み物の選び方も気をつける必要があります。そういった方はボトルのラベル記載なども参考にしながら、水または麦茶などと梅干しや味噌汁などを組み合わせて摂取するようにしましょう。
また、汗を流して働いたあとの最初の一杯のビールは大変美味しいかと思いますが、アルコールは利尿作用を持っています。そのため液体を飲んでいますが、むしろ水分補給の役目を果たせませんのでお気をつけ下さい。まずは作業前・作業中・作業後の適度な水分・塩分摂取で脱水を補正してから、夕ご飯と一緒に少量のお酒を楽しむようにすると良いでしょう。
それでは皆様、良い夏となりますように!
「健康さんぽ95号」
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