健康さんぽをご覧の皆様、こんにちは。今年度の4月から君津健康センターで勤務させていただいております、日野優希と申します。昨年度までは、2年間の初期臨床研修医として病院に勤務しており、現在は念願の産業医の第一歩として、修練医という形で勉強の日々を過ごしております。
さて、私は2年ほど前からうさぎを飼っています。ネザーランドドワーフという品種で、うさぎの中で最も小さく、耳が短くて丸い顔が特徴です。薄茶色をしていることから、単純ですが、モカちゃんと名付けました。私の生活に欠かすことのできない、日々の癒しの存在です。
つい先日、うさぎの多頭飼育崩壊のニュースを耳にしました。多頭飼育による苦情の件数は、全国で年間2,149件も存在します。特にうさぎは犬、猫と比較して繁殖力が高く、特有の繁殖生態をもつため、多頭飼育に陥りやすいと言われています。
こうした多頭飼育を防ぐため、平成30年度には、環境省から「人、動物、地域に向き合う多頭飼育対策ガイドライン」が出されています。このガイドラインでは、多頭飼育を「動物」の問題だけではなく、「飼い主」の経済的困窮や社会的孤立等の問題が複雑に絡みあって起こるものと考えています。対応にあたっては動物愛護管理分野だけでなく社会福祉分野の行政職員や専門家等と連携した施策展開が必要とされています。
また、アメリカ精神医学会は、「他の人からは価値がないと思われるモノを過剰にためこみ、その所有したモノを捨てたり、手放したりするのが持続的に困難であり、その結果、生活や仕事のスペースがモノで溢れてしまう状態になること」をホーディングと定義しており、独立した精神疾患の一障害と位置付けています。このように過剰にモノをためこむ人をホーダーと呼び、特に動物をためこむ人がアニマルホーダーと称されます。どうやら医学とも無関係ではないようです。
私たちはペットを飼う前に、正しい知識を身につけ、必要に応じて不妊去勢手術を行うなどの対策を責任もって行う必要があります。前述した近年のガイドライン策定や施策展開などによって、こうした悲しいニュースが少しでも減ることを願います。
最後に、「うさぎは寂しいと死ぬ」とよく言われますが、実は科学的な根拠は何もなく、ただの迷信だそうです。広まった理由としては所説ありますが、ドラマのセリフがそのまま言い伝えられた説やうさぎの販売促進のためだったという説もあります。本当のところは分かりませんが、「寂しいだろうから何匹か飼って仲間を増やしてあげよう」、という気遣いも、うさぎからすると、そもそも不要なものなのかもしれません。
うちのモカちゃんも、寂しくて死んでしまうどころか、私が仕事から帰宅すると、「なんだ、もう帰ってきたのか、のびのびしていたのに残念。」と言わんばかりの塩対応です。そのツンっとした態度もたまらなく可愛い!と思っている親バカっぷりなのでした。
「健康さんぽ96号」
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