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眼精疲労を見逃すな!!

医師 小倉 康平

パソコンで長時間の作業をした後や、スマホ(スマートフォン)でメッセージのやりとりを終えた後など、「目が疲れた」「目がしょぼしょぼする」といったことは、誰にでも経験のあること。たいていは自然に治り、忘れてしまいます。しかし、ときには症状が頑固に続いたり、からだに悪い影響が出たりすることがあります。医学的にはこのような状態を「眼精疲労」と呼び、単なる目の疲れである「眼疲労」と区別しています。すなわち、「眼精疲労」とは、治療したり、仕事や環境を変えない限り、自然には治らない「病気」なのです。不快な症状がいつまでも続き、その症状がさらに状態を悪化させることもあります。さらに、背後に目やからだの病気が隠れている可能性も考えられます。あなたのその目の疲れは、本当に「ただの目の疲れ」でしょうか?一緒に見ていきましょう。

症状をチェックしよう!

眼精疲労でからだに症状が現れる理由はよくわかっていません。しかし、物が見にくくなるために、目を凝らしたり、不自然な姿勢をとったりすることで目や肩の緊張が続き、頭痛やめまい、吐き気、肩こりの原因となることは容易に想像できます。さらには、精神的なストレスが目とからだの不調につながっている可能性もあります。

眼精疲労の原因を探ろう!

原因①:目に病気が起きている

眼精疲労を訴える患者さんの目を検査すると、しばしば次のような病気や異常が見つかります。

近視、乱視、老眼や、その矯正不良

近視・乱視・老眼が進むにピントを合わせようとして、水晶体(すいしょうたい)(レンズ)の厚さを調節する毛(もう)様体(ようたい)と呼ばれる筋肉の緊張が続きます。そして、実際に視力が低下してくると、今度は目を凝らしたり、首を前に出す姿勢になります。それらの結果、目が疲れ、首筋や肩が凝ったりします。とくに老眼は40代半ばから60歳ぐらいまでの間に急速に進み、この年齢は眼精疲労の患者さんの年齢層のピークとピタリと一致します。

また、近視や老眼を矯正するために作ったメガネやコンタクトレンズが合っていないために眼精疲労が起きることも少なくありません。乱視により左右の視力差が大きく、それを無理にメガネで矯正するために起こる不等像視(網膜に写る像の大きさが左右で異なる)では、眼精疲労は避けられず、コンタクトレンズが必要です。メガネやコンタクトレンズは、検査を受けて自分に合ったものを処方してもらいましょう。

ドライアイ

ドライアイとは、眼球の表面である角膜(かくまく)(黒目の部分)や結膜(けつまく)(白目の部分)が乾燥する病気です。仕事でパソコンを使い続けたり、スマホを手放せないなど、目を酷使する人やコンタクトレンズを使っている人がなりやすく、しばしば眼精疲労を伴います。

また、乾燥や、目をこすることによって目の表面に傷がつき、そこにバイ菌がついて角膜炎や結膜炎を起こすこともあります。

緑内障

網膜の視神経が障害されて視野が狭くなる(見える範囲が狭くなる)病気です。治療せずにいると失明することもありますので注意が必要です。緑内障の患者さんは眼圧(眼球の内圧)が高い人が多く、眼圧が高いときには眼痛や頭痛が起きやすくなります。

白内障やその手術の影響

白内障は水晶体が濁る病気で、視力が低下したり、まぶしさを感じたりして、眼精疲労の原因となります。白内障は手術で治せますが、手術後は見え方が変わるので、それが眼精疲労を起こすこともあります。

斜位、斜視

物を見るときには両眼が連動して動き、わずかに寄り目になって視線を一点に合わせます。しかし、何らかの原因で両目の視線が一致せずに左右別々の方角を向いてしまうことを斜視といい、眼精疲労の原因になります。

眼瞼下垂

まぶた(眼(がん)瞼(けん))が垂れ下がってくる病気です。視野の上のほうが見えなくなるので、物を見るときに頭を後ろへ反らすなどしなければならず、眼精疲労の原因になります。

原因②:からだの病気が目に現れている

かぜやインフルエンザ、更年期障害、自律神経失調症、虫歯や歯周病、耳や鼻の病気などで眼精疲労になることが多く、その他の病気でも眼精疲労が起こり得ます。

原因③:目の使いすぎや「視環境」の問題

目は使えば使うほど疲れます。特に、狭く暗い室内でパソコンや書類の文字など近い距離の小さいものを見続けることは、目の過労につながります。体にあわない椅子や机、不適切な位置に置かれたディスプレイなども不自然な姿勢につながり、眼精疲労を悪化させます。また、近年ではシックハウス症候群(住居の建材に含まれる化学物質などの影響による体調不良)と眼精疲労の関係も指摘されています。

コラム①:VDT

高度情報化社会という言葉さえ古く感じる今日この頃、生活に必要な物に順番を付けると、スマホ(スマートフォン)やパソコンといった画像情報端末(VDT : visual display terminal)が水や食べ物に並ぶのではないでしょうか。このVDTが現代人の眼精疲労に大きく関わっています。

VDTがテレビと異なるのは、画面の隅々から必要な情報を探し出し、その意味を理解し、それに対する指令を入力し、入力した内容や文字を確認し、実行してその反応を確かめるという、一連の動作を伴う点です。もちろん、目の疲れは、テレビを見ているのと比べものになりません。VDT作業中はまばたきの回数が極端に減り、その結果、涙が蒸発してドライアイになりやすくなります。私たちの便利な生活は、目の過労のうえに成り立っていると言えそうです。

原因④:ストレスやメンタルヘルス疾患の影響

ストレスが強くなると、異常な不安感、イライラして落ち着かない、眠れないといった精神的な症状として現れる一方で、からだに対しても、高血圧、血行不良、胃潰瘍といった多様な病気を引き起こします。その一つとして、眼精疲労が起こることがあります。

以上のように、眼精疲労には四つの大きな原因があります。そして、一つひとつの原因はそれほど深刻でなくても、小さな原因が重なり合って目の負担が増え、眼精疲労が起こることもあるのです。そのようなケースでは、問診や検査で原因と考えられるものを洗い出し、それを一つひとつ治療・解決していくことが必要です。

コラム②:良い診療を受けるために次のことを医師に伝えましょう

・具体的な症状(目やからだの症状をできるだけ詳しく)
・いつから気になりだしたか
・最近、仕事や生活環境が変わらなかったか
・どんな時に症状がひどくなり、どんなときによくなるのか
・目の病気をしたことはあるか
・持病はあるか
・メガネやコンタクトをしている人は、いつから使い始め、最後に作ったのはいつか

原因に対処しよう!

まずやるべきことは、眼精疲労の背後になにか病気が隠れていないかチェックすることです。視力や眼圧、眼底、視野、眼球運動などの検査を受けて、病気がみつかったらその治療をします。メガネやコンタクトレンズを使用している人では、それらが目にあっているかチェックすることも重要です。

次に、日々の生活や仕事を見直してみましょう。部屋の明るさ、机や椅子の高さをチェックします。パソコンを使うのであれば、その位置や環境も重要です。デスクの片づけも一つの解決策かもしれません。室内が乾燥したり、空調の風が直接目にあたるとドライアイを引き起こします。また、眼精疲労の意外な原因として、たばこの煙もあげられます。

時間も大切なポイントです。一日中、パソコンやスマホを見続けてはいませんか?仕事の合間にこまめに休憩をとって目を休め、心とからだもリフレッシュさせましょう。そして、睡眠を十分とりましょう。寝不足のときには、目を使う時間が長くなる一方で目を休める時間が減るのですから、目が疲れて当然です。

趣味や散歩、スポーツなどで、ストレスを解消しましょう。ただ、ストレスがいくつも重なったり、長期間続くと、ストレスを解消しようとする意欲までなくなることもあります。そんなときは医師や産業医に相談し、治療やアドバイスを受けてください。

コラム③:よいメガネのチェックポイント
度数があっているか

近視、遠視、乱視、老眼の程度は時間とともに変化します。とくに老眼の初期から中期は進行が早いので、こまめに検査を受けてください。ただし、小さい物や遠い物がはっきり見えることが必ずしもよいとは限りません。矯正しすぎ(過矯正)はかえって目が疲れる原因になります。メガネを作るときには、使用目的や使用時間をしっかりとメガネ屋さんに伝え、適切なものを作ってもらいましょう。

レンズの中心が瞳孔の位置とあっているか

左右の目の間隔は、人それぞれ異なります。それに合わせてレンズを加工しないと、物がゆがんで見えてしまいます。

顔のかたちにフィットしているか

耳や鼻に自然にフィットし、レンズと目の距離が12ミリになるのが、適切なフレームです。

レンズの汚れや、フレームのゆがみがないか

レンズの汚れや傷、フレームのゆがみがあると見にくいので、やはり目が疲れます。

「健康さんぽ72号」

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