昨今、高齢ドライバーの運転する自動車や何らかの健康問題を有する長距離ドライバーの運転するバスなどによる事故で、人命が失われる悲しい事例が続いています。自動車事故の原因には、年齢を重ねたことによる心身の機能低下に加え、生活習慣病などによる健康状態の悪化に伴うものも少なくありません。
たとえば「自動車運転」「内因性急死」「事故」などのキーワードをインターネット検索するだけでも『運転者の体調変化による事故例の検討―病死例と事故死例の比較―(2011年日本交通科学協議会誌)』や『自動車運転中の内因性急死の実態と予防(2000年国際交通安全学会誌)』などの学会報告や、様々なニュースを知ることが出来ます。
海外の報告では交通事故死の1割程度は運転者自身の急な体調変化に起因するものであるとも言われています。日本国内の報告でも、脳卒中や心筋梗塞、大動脈解離などに伴う運転者の意識喪失や、適切なハンドルやブレーキの操作が出来なくなることによって事故が発生したケースが見られています。これらの意識喪失に関わるような重大な疾患は、高血圧・糖尿病などの一般的な健診で分かるような基礎疾患の治療をすることでリスクが低減出来ます。会社の健康診断で、血圧、血糖値関係、心電図などに異常を指摘された方はそのまま放置せず、必ず二次検査に行って頂くことが重要です。
そういったケース以外でも、年齢が上がるほど認知症などの脳機能の問題に加え、神経の反射速度の低下や視野・視力の問題など、心身の様々な機能低下により運転能力が自覚以上に不安定になる場合も無視出来ません。居住地の交通の便の善し悪しで自動車を手放せない場合もあるかとは思いますが、こういった問題が起こりうることを意識して頂き、「走行スピードを落とす」「夜間での慣れない道ではなるべく運転しないようにする」「右折左折時には特によく周囲を確認する」「黄色信号の際に無理して急がず止まる」など、安全運転を心がけていきましょう。
「健康さんぽ83号」
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