「音楽を牛に聞かせながら育てると、良く牛乳が出るようになる」「草木も音楽を聞かせると良く実る」といった話を耳にされたことがある方も多いかと思います。しばらく前には、「ヒーリングミュージックなどの、アルファ波が出るような音楽を聞きながら仕事や勉強をすると集中力が増してはかどる」といった流行がありました。さて、音楽と一口に言っても、現在の日本には色々な種類の音楽があります。では「効能をもたらす」ために聞く音楽の種類は、クラシックやヒーリングミュージックでなければならないのでしょうか?
これは「効能」をどのようなもので定義するかによって変わってくる部分があると思います。「ポップミュージックが慢性疼痛を緩和する」「クラシック音楽が不眠の解消に効果がある」「モーツァルトの曲がアルツハイマー病の患者の記憶力を高める」などの事例があるようですが、これらは一般的な「効能」と言っていいでしょう。ではロックはと言うと、「落ち着かせる効能はあまりないようだが、気分が高揚し、元気になる」ようです。試合前のスポーツ選手、それもボディコンタクトが多いようなスポーツの選手では、有意にロック視聴者が多かったとの論文もあるようです。また、歌詞がある曲(歌詞の意味を理解できる曲)を聞くとそちらに注意が向いてしまうので、何か新しいことを覚えるような際には曲調に加えて歌詞の有無も重要だそうです。もちろん、医学的に見て「高血圧の患者さんが聞く場合」などを想定すると当然、リラックス効果の高い音楽を聞くべきであり、ロックを聞きながらヘッドバンギング(音楽に合わせて頭を激しく前後に振る)などは医学的にはまったく論外なのはいわずもがなですね(笑)。
ですが、個人的には私はロック、それもいくつかの限られたバンド・ミュージシャンの曲を聴くのが非常に好きです。広くロックが好き、というよりはもっと狭いはまり方をしているのだなと自覚しています。それらのバンド・ミュージシャンのファンになったのは主に中学生~大学生のころでした。皆さんも思春期には好きなバンド・ミュージシャン・アイドルなどがあった方も多いと思います。そのころの自分の悩みや、日々の想い、そういったものを昇華してくれるためにロックは非常に大事でした。もちろん、何らかの効能を求めて聴いているわけではなく、単に「何よりもその音、その声に惹かれてたまらない何かがあるから」という衝動だったように思います。90年代に一度は解散し、メンバーで亡くなった方もいたバンドでしたが、2008年ごろの再結成をいざ前にするとそのころの熱い気持ちは自分の中で意外とまだ健在で、結局いまだにそのバンドの曲が自分の中で非常に大きな位置を占めていることに気づかされました。「(バンドも自分も)いくつになってもファンはファン」ということなのでしょう。
もし、皆さんも「最近あの曲聴いてないな」という思い出の1曲があるならば、芸術の秋を機に、また聴いてみてはいかがでしょうか?
「健康さんぽ68号」
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