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今すぐ始めたい 快適で安全な冬の過ごし方

医師 長尾 望

明けましておめでとうございます。あっという間に2025年ですが、皆様今冬いかがお過ごしでしょうか。今回は「快適で安全な冬の過ごし方」というテーマでお話ししたいと思います。

 さて、冬になると冷たい乾燥した空気に、思わず首をすくめてしまいたくなりますね。乾燥と冷えの対策はされていますか?衛生基準として労働安全衛生法(事務所則)で定められているのは、気温18~28℃、快適な相対湿度40~70%となっています。それを目安に過ごしやすい環境を整えるにはどんなことに気を付ければよいでしょうか?以下に整理してみましょう。

❖ 衣服

首・手首・足首など、体表近くに太い血管が走っている場所を温めるのが効率的です。マフラー、手首までの長めの手袋、レッグウォーマーなどを使用すると、熱が逃げていきにくいです。また、最近は薄手なのにあたたかさを保てる下着なども発売されています。体質・生活に適した下着選びを心がけましょう。(皮膚が弱くかぶれやすい人には適さない下着もあるようですのでご注意ください。)仕事で冬でも汗をかく人は、汗で濡れた衣服が冷えて寒くなる、ということがないように、着替えを持参しておくのも良いでしょう。

❖ 食事

冷たい飲み物の飲みすぎ(ビールなど含む)は、勿論冷えにつながります。鍋料理で身体の中から&室温もあたためる、というのもこの時期には良いのではないでしょうか。香辛料や、生姜、根菜類など体を温めるとされるものもぜひ使ってみてください。鍋料理は野菜もたっぷりと食べやすいので、日ごろ野菜不足の人もぜひどうぞ。

❖ 住居

あたたかい空気が逃げない工夫

全体の熱の約50%は窓から流出していきます。暖房を効率的・経済的に行うことを考える場合、重要なのは一度温めた空気を逃さないことです。せっかく温めた空気が開けっ放しのドアから逃げてしまう、屋外との境目である窓辺で冷えてしまうなどがあります。断熱シート、二重のガラス(雪国などの仕様)、厚手のカーテンなどで窓から熱を逃がさない工夫ができます。壁や天井、床などにきちんと断熱材が入っているかどうかも重要です。今後のおうち選びの参考にも…?

扇風機などで空気を循環させましょう

あたたかい空気は上にたまります。エアコンの吹き出しはなるべく下方向へ。さらに扇風機やサーキュレーターなどをつけて空気を循環させましょう。天井が高い、二階との吹き抜けがある住居などでは特にしっかり空気を循環させる必要があります。

加湿器の活用:ただし雑菌が繁殖しないように、清掃はしっかり行いましょう

加湿器は色々と種類があります。それぞれご自宅の環境、年齢層にあったものを使用しましょう。

▶ 蒸気式:水をヒーターで加熱します。消費電力は大きいものの水分をしっかり供給できます。エアコンのみで暖房を行う際には適しているかと思います。ただし色々と過熱器具(ポットや 電子レンジ)を使う時にはブレーカーが落ちないように止めておくと無難です。

▶ 気化式:加湿エレメントに滴下した水に風を当てて蒸発気化させます。熱い蒸気は出ないので、お子さんがいても比較的使いやすいでしょう。

また、濡らしたタオルを干しておく等のやり方もありますが、ストーブの上に布・紙を干すのは絶対にやめましょう。火災の原因となってしまいます。

❖ 冬の運動

早朝や夜間遅い時間はあまりお勧めできませんが、無理な食事制限のダイエットをするよりは、この時期こそ運動を心がけましょう。筋肉量が増えると代謝が上がり、身体の芯から温まります。歩く時には大股歩行⇒筋力トレーニング、早足⇒エネルギー消費になります。ただし、寒くない(暑すぎない)服装で、かつ帰宅後は汗ばんだ服から着替えて冷えないようにすることも重要です。

❖ 冬の入浴 「ヒートショックにご用心!」

ところで、身体を温めるのにはお風呂をシャワーだけで済ませず湯船につかることが非常に有効です。ただし冬の入浴方法は間違うとヒートショックを起こし危険な場合もありますので確認しておきましょう。

出典:消費者庁公表資料 高齢者の「不慮の溺死及び溺水」による発生月別死亡者数(令和元年)

▶ ヒートショックとは?:お風呂やトイレなどに入る際、居室や脱衣所との温度差などで血圧が極端にアップダウンしてしまうことで、脳卒中や心筋梗塞などを起こし、結果として意識を失ってお風呂で溺死する状況などを言います。

❖ 冬の快適&安全な入浴のために

ヒートショックを防ぐために、冬の入浴の際に気を付けていただきたいことを最初にあげておきたいと思います。

▶ 気をつけたいこと:

  • ➀ 夕食夕食前・日没前の温かい時刻に入浴する
  • 脱衣脱衣所などに暖房器具を置く
  • ➂ 浴槽のふたを開ける、服を脱ぐ前に浴室の床や壁に温かいシャワーをまく(温める)
  • ➃ 湯船に湯船に入る前に体の末端からかけ湯をして、徐々に温める。湯温設定は41℃以下
  • ➄ 半身浴にするのがお勧め
  • ➅ 湯船から出るときはゆっくり立ち上がる
  • ➆ 食事直後・飲酒後の入浴は避ける
  • ➇ 入浴の前後にはコップ1杯の水分を補給する
  •  

また、ヒートショックを起こしやすい条件は、下の表の通りです。当てはまる方は、ぜひ今日から入浴方法を変えてみましょう。

▶ やってはいけない入浴:

❖ 暖房器具は正しく使いましょう

この時期は保温のために、灯油・ガスなどによるファンヒーター、ストーブ、こたつ、電気毛布等色々な暖房器具を使用しますので、それぞれ入浴時以外も気を付けることがいくつかあります。

▶ こたつ:長時間入りっぱなしや寝入ることで脱水のリスクあり

▶ 電気毛布:設定温度によっては、低温火傷の恐れあり

▶ ストーブ:火傷、不完全燃焼・換気の悪さによる一酸化炭素中毒、火災

❖ 知っておきましょう!低温火傷

大原則として、同じ部位を長時間にわたって加熱し続けないこと。密着するようなものは要注意です。違和感や痛みを感じるようならすぐに中止し流水等で冷やしましょう。

▶ 湯たんぽ、電気あんか:就寝前に布団の中に入れ、温まったら湯たんぽは布団から出し、電気あんかはスイッチを切りましょう。

▶ 暖房便座(温水洗浄便座):長時間着座しないこと。とくに80歳以上の高齢者等の皮膚感覚が弱くなった方が温度調節「高」の状態で便座に長い時間触れると、低温火傷をすることもあるため、温度調節を「低」、または使用直前まで温めて使用中は「切」にするなどのひと工夫が必要です。便座が冷たいことがつらいのであれば、カバー等を使用する(ただし、こまめに洗濯する)という方法もありです。

▶ 携帯電話:枕元近くや寝具の中に置きっぱなしで寝るのも時に危険です。就寝中に充電をしている人も多いかと思いますが、正規品でなかったり落として破損した充電池が過剰に加熱されたり、その電池が原因の出火発生の報告があります。

❖ 冬でも脱水に・・・脱!コ・タ・ツ・ム・リ

汗をあまりかかなさそうな冬でも脱水になることがあります。空気が乾燥し、のどの渇きも感じにくく水分摂取を忘れがちになります。また、こたつの中は暖かいですが、こたつの外=部屋の中は寒いという状態になっているため、こたつから出るのもトイレに行くのも億劫になり、水分摂取量が減少したり、うっかりそのまま寝てしまうこともあります。ひとはだらだら流れるような汗でなくとも、暑いと自然に発汗してそれが気化して体温を下げますが、こたつの中は次第に蒸れてしまってあまり汗が蒸発しなくなります。その結果脱水がすすみ、熱中症のように頭痛・吐き気などの症状が出ることになります。暖かく日本の冬に大事な(?)こたつですが、“コタツムリ”にならずに、フットワーク軽く動きましょう。

❖ 換気が重要! 恐ろしい一酸化炭素中毒

灯油やガスを燃やす暖房器具では、じゅうぶんな換気をしながら使用しましょう。一酸化炭素は、モノの燃焼時に酸素が不足していると発生します。しかも赤血球の中のヘモグロビンととても結合しやすく、一酸化炭素がくっついてしまったヘモグロビンには酸素が付けず、肺でのじゅうぶんなガス交換ができなくなります(息を吸っても吸っても身体に酸素を供給できず苦しい)。一酸化炭素中毒の症状について次の表を参考にしていただき事故のないように注意してください。

【参考】

 

「健康さんぽ105号」

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