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季節の変わり目、予防・対策も変わり目?これって『 秋バテ 』!?

医師 長尾 望

30日以上35℃超えの猛暑だった昨年に引き続き、38℃も見間違いではない異常な暑さの今夏でしたが、皆様は体調を崩さずに過ごせましたでしょうか?暑い時期に連日の工場でのお仕事でへとへとになってしまった方、屋外でのスポーツで熱中症になりかけた方、はたまた屋外との気温差の大きい冷え過ぎの事務所内でのお仕事で最近だるさが続いている方…、ご自身や身近な方の声として、どこかで耳にする体調不良の事例があると思います。

秋分の日も過ぎて、これからは日照時間が短くなり気温が下がります。 空気も乾燥してきたところにエアコンは暖房へ切り替わり、更に湿度は低下。家の中でも人のいる居間と、トイレや風呂場との温度差もぐっと広がります。こういった季節に私たちは何に気を付けるべきでしょうか?

❖ いわゆる夏バテ継続 全身倦怠感、食欲不振、気力の低下等

暑さからくる食欲低下による食事メニューの偏り、大量の発汗による水分・ミネラルバランスの異常、睡眠不足、冷たい飲み物を多量に摂ることで胃液が薄まって消化機能が低下、冷房による自律神経の乱れなど、心身への悪影響が続いてしまうことがあります。

食欲低下・・・麺類のみでなく、魚や野菜の天ぷら・納豆・肉みそなどを添える、ラーメンなら野菜炒めや餃子と一緒に、スパゲティならソースを絡めるだけではなく野菜やベーコンなどを一緒に炒める、そうめんチャンプルにして野菜や卵を一緒に食べるなど、たんぱく質・野菜追加を意識しましょう。プラスαの具材、調味料・スパイスなどひと工夫してみましょう。

水分補給 ・・・冷えすぎていないものに変えてみましょう。また、スポーツ飲料はミネラル補給にはやや薄く糖質が多めであることに注意が必要です。

睡眠・・・寝るときの室温、寝具の厚さ、室内灯をオレンジ色の電球色にするなど、調整してみましょう。

❖ 不調の裏に他の疾患が隠れている 貧血、栄養失調、糖尿病、膠原病、甲状腺疾患、冬季うつ病等

上記の夏バテ予防・対策をとっても症状が長引く場合や症状がじわじわと悪化する場合は受診しましょう。夏バテが続いていると思ったら、大きな病気が隠れていることもあります。

貧血・・・たんぱく質や鉄分不足、身体のどこかで出血がある(胃潰瘍や大腸の病変などからの出血や女性の過多月経等) 消化器科、婦人科など、併発している症状に合わせた科へ受診を。

栄養失調・・・水分や主食が甘い飲み物や麺類だけなど、炭水化物だけでおなか一杯になるほど多く摂ってしまい、たんぱく質が不足すると起こります。免疫能力の低下や不調、だるさなどへつながります。 ▶ 先述の食欲低下の項に書いた食事の工夫を試してみましょう。

糖尿病・・・糖尿病のある人が清涼飲料水(ジュース、糖の入ったコーヒー・紅茶飲料、糖質0以外のスポーツドリンク、飲むヨーグルトや野菜ジュース、エナジードリンクなど)やアルコールを多量に摂取すると、ひと夏の間に驚くほど悪化します。また、秋には美味しい果物がたくさんあります。食べ過ぎにも注意しましょう。夜間や就寝中にトイレに2回以上起きるようになったひとは要注意です!!  ▶ 内科、内分泌・代謝科などへ受診を。

膠原病・・・比較的若年女性で発症しやすく、微熱が続く、皮膚や関節がこわばる・痛む、身体の左右対称性に症状が発生する、等  ▶ 膠原病科へ受診を。

甲状腺疾患 ・・・➀ 食べていないのに体重がぐんぐん増加する、著しく元気が出なくて動くのがとてもつらい、それらがじわじわ悪化している、等 ➡ 甲状腺機能低下症の疑い  ② やけに元気が出てきた、寝ていなくてもあまり疲れない、食べているのに体重が減っていく、動悸・発汗が目立つ、等 ➡ 甲状腺機能亢進症の疑い ▶ これらを疑う場合は、内科、内分泌・代謝科などへ受診を。

冬季うつ病・・・日照時間の減少に伴い、症状が悪化する。朝起きるのがつらい、気持ちが著しく憂うつ、動かなければならないのに気力がわかない、頭痛や吐き気、腹痛などで出勤できない、等  ▶ 以下のような体調を整える工夫をしてみましょう。

  • *生活リズムを整える:体内時計がしっかりリセットできるよう、休日に日頃より2時間以上超過するような長寝はしない。朝から太陽の光を 浴びる。朝ごはんと水分は少量でも必ず摂る。
  • *寝つきをよくする工夫をする:お風呂でぬるめの湯船にじっくりつかる。寝室が暑すぎたり寒すぎたりしないように空調等で調整する。
  • *空調のほどほどの利用:外気温と室温の差は5℃くらいまでにする。タイマーを活用する。
  • *適度な運動:日中は少しからだも使って程よい疲れがあると寝やすいようです。寝る直前の激しい筋トレは避け、ストレッチで緊張をほぐすほうを重視しましょう。
  • *お酒:お酒を水分代わりにしない。飲むのは1~2合/日まで。日付をまたいでの深酒はしない。※ 飲んで寝ると寝つきはよいように感じますが、睡眠は浅くなったり、夜間にトイレに起きてしまったりと睡眠の質は低下します。

 ▶ それでも調子がすぐれない、気持ちの低下が著しい、睡眠に支障が出ているなどの場合は、心療内科への相談も考慮しましょう。

❖ 気温差と服装、乾燥対策

この時期は朝/日中/夜間の気温差が激しいものです。朝出発の際には一枚薄手の羽織るものがあるとよいでしょう。日中に汗をかくと気温が下がってから冷えてしまうので、一枚脱いで身軽になりましょう。ヒートテックなども気温に応じた活用をすると良いですが、人によっては肌荒れが出る場合もあるようですので、肌に合わなければ綿の肌着が汗を吸って良いようです。

❖ ヒートショックにご注意!

家の中でも人のいる居間と、トイレや風呂場との温度差が拡大。それによっておこる急病がヒートショックです。

暖かい居間から寒いトイレ・脱衣所へ・・・寒さにより末梢血管がぎゅっと収縮して急激に血圧が上昇します。脳出血、大動脈解離など出血系の異常発生につながります。

冷えた脱衣所・洗い場から熱い湯船へ・・・湯船の温度で一気に末梢血管が拡張、急激に血圧が下降します。意識を失うことや脳卒中・心筋梗塞の発生にもつながります。

予防と対策:トイレや脱衣所にヒーターを置く、洗い場には少しの間シャワーを出しっぱなしにして湯気で温める、かけ湯で体を少し温めてから湯船へ入る、などでヒートショックを防ぎましょう。

いかがでしたでしょうか?移り変わる季節により、発生しやすい疾患は異なります。それぞれの状況に応じた対処を行い、健康にお正月を迎える準備として参考にしていただければと思います。

「健康さんぽ104号」

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