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気をつけましょう かぜとインフルエンザ、マイコプラズマ肺炎

医師 桝元 武

1.かぜ(症候群)とは何か

今回はかぜ、インフルエンザ、マイコプラズマ肺炎についてお伝えしたいと思います。まず、かぜ(症候群)とは、微生物や寒さ刺激により主に上気道(口、鼻、喉)に起きた急性炎症全般を指す言葉で、インフルエンザも含みます。この炎症が下気道に及ぶと、気管支炎、肺炎となっていきます。

わが国では、例年12月~3月がインフルエンザの流行シーズンです。一旦流行が始まると、短期間に小児から高齢者まで膨大な数の人を巻き込む可能性があります。

2011年の12月にウェザーニューズ社は、かぜに関して全国で約2万人を対象としたアンケート調査を実施しました。その結果、この1年で風邪をひいた回数は平均2.3回、風邪が完治するまでの日数は平均4.7日という結果が出ました。皆様はいかがでしょうか。

かぜの原因の約90%はかぜウイルスで、次いでその他細菌、マイコプラズマ、クラミジアなどです。

2.原因・症状・合併症

ヒトインフルエンザウイルス:これによるかぜは呼吸器症状に加えて39度以上もの高熱が出るのが特徴です。頭痛・腰痛・倦怠感を伴うことも良くあり、体力の低下のため、他のウイルスや細菌等の混合感染により消化器症状が加わります。子供ではまれに急性脳症を、高齢の方や病気その他で免疫力の低下している方では肺炎を伴うなどの重症になることがあります。

インフルエンザの原因となるインフルエンザウイルスには、A型、B型、C型があります。C型は症状は軽いがA型とB型(特にA型)は症状が強く、これまで世界的な流行がありました。よく耳にするソ連型と香港型はA型で交互に流行します。A型インフルエンザウイルスはさらに144種類もの型(亜型)に分けられます。B型インフルエンザウイルスは2種類(山形型、ビクトリア型)ですが、同様にその中でさらに細かい型に分かれます。A型のインフルエンザは、ウイルスが小さく変化しながら毎年世界中のヒトの間で流行しています。これを季節性インフルエンザと呼んでいます。これに対して、大きく異なったウイルスが現れ、多くの国民が免疫を獲得していないことから全国的に急速にまん延し、国民に大きな影響を及ぼす可能性があるものを新型インフルエンザと呼んでいます。日本国内における流行状況の詳細は、国立感染症研究所感染症情報センターのホームページをご覧ください。

3.予防・治療

① 流行前のワクチン接種
インフルエンザワクチンは、感染後に発病する可能性を低減させる効果と、インフルエンザにかかった場合の重症化防止に有効と報告されています。ただし、ワクチンは、そのシーズンに流行が予測されるウイルスに合わせて製造されているため、完全に発症を防ぐことは期待できません。
② 飛沫感染対策としての“咳エチケット”
インフルエンザの主な感染経路は、咳やくしゃみの際に口や鼻から発生される水滴(飛沫)飛沫感染です。しかし家族や学校のクラスメイトなど日常的に一緒にいる機会が多い者同士での飛沫感染を防ぐことは難しいでしょう。インフルエンザの飛沫感染対策としては、普段から皆が咳エチケットを守ることを心がけてください。飛沫感染対策ではマスクは重要ですが、感染者がマスクをする方が感染を抑える効果は高いと言われています。なお、マスクで細菌やウイルスそのものの侵入を防ぐことは困難ですが、マスクをしている本人は鼻や喉の奥に適度な湿度を保つことができ、本来のバリヤ機能により異物をできるだけ体内に入らせないようにすることが可能です。
③ 外出後の手洗い等
流水・せっけんによる手洗いは手指などについたウイルスを除去するために有効な方法であり、感染症対策の基本です。インフルエンザウイルスはアルコールによる消毒でも効果が高いですから、アルコール製剤による手指の消毒もおすすめです。
④ 適度な湿度の保持
空気が乾燥すると、喉の粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなります。特に乾燥しやすい室内では、加湿器などを使って適切な湿度(50~60%)を保つことも効果的です。インフルエンザウイルスは、温度とのかねあいもありますが、湿度が低いほど増殖速度が大きくなります。
⑤ じゅうぶんな休養とバランスのとれた栄養摂取
身体の抵抗力を高めるために、じゅうぶんな休養とバランスのとれた栄養摂取を日ごろから心がけましょう。睡眠不足はかぜのもとです。
⑥ 人混みや繁華街への外出を控える
インフルエンザが流行してきたら、できるだけ人混みや繁華街への外出を控えましょう。やむを得ず外出して人混みに入る可能性がある場合には、マスクを着用することはひとつの防御策と考えられます。また、人混みに入る時間は極力短くしましょう。

インフルエンザかな?と思ったら: 早めに医療機関を受診し、安静にして休養をとりましょう。特に睡眠を十分にとることが大切です。また、水分を十分に補給しましょう。お茶でもスープでも飲みたいもので結構です。普通に健康な人で、症状が強くなければ、わざわざ病院受診(別の病気を貰ってしまうリスクがある)せず約1週間自宅で安静にしている、というのは非常に賢明な選択枝です。また、インフルエンザにかかったらどのくらい休めば良いかはよく訊かれることですが、自覚症状が治まればウイルスの排出は止まっていると考えられます。参考までに、学校保健安全法では「発症した後5日を経過し,かつ,解熱した後2日(幼児にあっては,3日)を経過するまで」をインフルエンザによる出席停止期間としています(ただし、病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めたときは、この限りではありません)。

相談窓口について: 全ての都道府県において「発熱相談センター」が設置されています。医療機関を受診する前に、必ず電話で連絡をし、受診時間や入り口等を確認してください。受診するときは、マスクを着用し咳エチケットを心がけるとともに、公共の交通機関の利用をできるだけ避けてください。

インフルエンザの治療薬について: 下記の抗インフルエンザウイルス薬があります。効果はインフルエンザの症状が出はじめてからの時間や病状により異なりますので、使用する・しないは医師の判断になります。

抗インフルエンザウイルス薬の服用を適切な時期に開始すると、発熱期間は通常1~2日間短縮され、ウイルス排出量も減少します。なお、症状が出てから2日(48時間)以降に服用を開始した場合、十分な効果は期待できません。効果的な使用のためには用法、用量、期間(服用する日数)を守ることが重要です。ただし、予防的内服は推奨されません。

参考:マイコプラズマ肺炎について

①マイコプラズマ肺炎について

マイコプラズマ肺炎は、「肺炎マイコプラズマ」という細菌に感染することによって起こる呼吸器感染症です。小児や若い人の肺炎の原因としては、比較的多いものの1つです。例年、患者として報告されるもののうち約80%は14歳以下ですが、成人の報告もみられます。マイコプラズマ肺炎は1年を通じてみられ、冬にやや増加する傾向があります。

マイコプラズマ肺炎は周期的に大流行を起こすことが知られており、日本でも1980年代では1984年、1988年に比較的大きな流行があるなど、4年周期での流行が報告されています。1990年代以降はかつて見られた大流行が見られなくなった一方で、2000年以降は患者報告数が増加傾向にあり、2011年は年間累計報告患者数が、2000年以降の最多報告数(2010年)を大きく上回りました。2012年は第1週から第37週まで2011年の報告水準を上回った状態が続いています。2011年から2012年にかけてこのような状態がみられている原因はよくわかっていません。

②感染経路・症状

患者の咳のしぶきを吸い込んだり、患者と身近で接触したりすることにより感染すると言われています。家庭のほか、学校などの施設内でも感染がみられます。感染してから発症するまでの潜伏期間はやや長く、2~3週間くらいとされています。

発熱や全身倦怠感(だるさ)、頭痛、痰を伴わない咳などの症状がみられます。咳は少し遅れて始まることもあります。咳は熱が下がった後も長期にわたって(3~4週間)続くのが特徴です。多くの人はマイコプラズマに感染しても気管支炎ですみ、軽い症状が続きますが、一部の人は肺炎となり、重症化することもあります。一般に、小児の方が軽くすむと言われています。

③予防・治療

感染経路はかぜやインフルエンザと同じですので、普段から、手洗いをすることが大切です。また、患者の咳から感染しますので、咳の症状がある場合には、マスクを着用するなど咳エチケットを守ってください。

抗菌薬(抗生物質)によって治療します。抗菌薬のうちでも、マイコプラズマ肺炎に効果のあるものは、一部に限られています。近年、マイコプラズマ感染症に通常使用される抗菌薬の効かない「耐性菌」が増えてきているとされていますが、耐性菌に感染した場合は他の抗菌薬で治療するなどします。軽症ですむ人が多いですが、重症化した場合には、入院して専門的な治療が行われます。長引く咳などの症状があるときは、医療機関で診察を受けるようにしましょう。

以上が参考になりましたら幸です。

出典:厚生労働省ホームページ

「健康さんぽ57号」

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