近年、海外旅行に行く人や海外赴任者が増加し、それに伴って海外の医療に関わる機会が多くなってきています。一口に海外と言っても各国によって事情は異なりますが、共通するのは日本と同じように自分がかかりたい病院や診療科に気軽にかかれるわけではないということです。たとえば、イギリスでは、あらかじめかかりつけ医(家庭医)を決めて、風邪や腹痛、結膜炎、中耳炎などは、まずその家庭医の診察を受け、必要があれば耳鼻科や眼科などの専門医を紹介してもらうという形をとります。日本においても最近は、大学病院や大規模な総合病院は初診の場合、紹介状がないと一定金額が上乗せされ、大病院への集中を分散させる方策がとられていますが、海外ではそれ以上に専門医や大病院の敷居が高くなっています。
アメリカは日本のような皆保険ではなく、会社が負担する保険か民間の保険に入ることになります。アメリカの医療費は莫大で、保険なしで虫垂炎や骨折などで治療を受けた場合、数百万円を請求されることもあります。
アジア圏では、シンガポール、上海、ホーチミン(ベトナム)などに、日本人医師が常駐する日系クリニックがあり、内科系を中心に日本と同様の診察を受けることができます。入院が必要な場合は、信頼のおける現地の病院を紹介してくれます。タイのバンコクでは、日本の大学を卒業したタイ人医師の勤務する病院がいくつかあり、日本語での受診が可能です。昨年、日本でも流行したデング熱やマラリアなど熱帯の病気に関しては、現地の医師のほうが精通しており、早く適切な診断を受けられる場合もあります。
海外赴任の場合は、医療費は会社負担となっているところがほとんどだと思われますので、特に問題はないでしょうが、赴任先の医療機関については、あらかじめ情報を集めておくことが必要です。高血圧や糖尿病など慢性疾患で治療中の場合は、診断名と処方薬の一般名を英語で書いたものを持参しておくとよいでしょう。これは短期の旅行者でも同様です。薬の名前は、製薬会社がつける薬品名ではなく、世界共通の一般名で書いてもらう必要があります。
海外旅行の場合、病気だけでなく事故に巻き込まれる事例も増えていますので、数日間の短期間であっても海外旅行保険に加入しておくことをお勧めします。海外旅行保険は、支払いがサインだけですむキャッシュレスサービスがあったり、現地の病院を紹介してくれるなどのアシスタントサービスを利用できます。また、インターネットで加入すると、空港で入るのと比べて半額位の負担ですみます。何事もなく無事帰国できればそれに越したことはありませんが、万が一のことを考えて必ず加入するようにしましょう。
「健康さんぽ65号」
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